アウラ、結婚してくれ。
雨が好きです。
最も好きな雨は、どこか愁いを帯びた気だるげな雨です。
激しく地面を叩きつけるわけでもなく、細く目に見えぬほど淡く包むわけでもなく。適度に、視界を水の筋で煙らせ、薄白い空から地面までのすべての境界をあやふやにして土やアスファルトにひしゃげたり屋根沿いから大きな塊となって落としたり。そんな雨が大好きです。土砂降りや霧のような小雨も好きですが、やはりあくまで日常を薄く塗り潰すそんな雨が好きです。
どの季節でも良いものです。
寒さの中に少し湿度をはらみ始めた春、鬱陶しくも体を動かされる夏、地面の色が鮮やかににぎわう秋、時間の分子をも止めようと静かな冬、どの季節であっても自分の精神の調律を行ってくれるのがこの雨です。
こげ茶色の木製のウッドデッキ、またはテラス、その屋根の下で肌にまとわりつく湿気を感じながら、時折足元に風が運ぶ雨粒をじゃれつかせながら重たい味のワインでもいただく、と言うのが自分の将来の夢です。叶う事も夢の中で見る事も今のところありませんが、あまりにも自然に想像できるので惜しくはありません。
空から水が降ってくるような奇跡を自分は他に知りません。
おわり。
