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鉄塔について何も知らない話。

魂の形とはどのようなものなのだろう。

 

鉄塔が好きです。

おそらく無いとそこそこ困るものなのに、視界に入ったところで特別意識される事も無い健気な存在です。

田舎の開けた道だとウケるくらい均等に配置されている具合がよくわかる人工物なのに、あまりにも田んぼや木々になじんでいらっしゃるところとか。

小さめのちょろんとした鈍い錆鉄色な奴や、6角水晶の骨組みが横倒しに積み上げられたような形の奴や、大きくて赤と白色でついでに明かりも点滅しているボス的な奴とかが色々いるところとか。

夏の真っ青な空に骨組みをすかすかに晒している姿とか、夕焼けの赤に黒い輪郭で佇む少し不気味な姿とか。

自分は夕焼けの鉄塔の方が好きです。とても〈何か〉が始まりそうな気がします。それは決して明るいものではないでしょうが、このしょうもない日常を変えるには優におつりがくるほどの〈何か〉なのでしょう。

 

毎日仕事へ行き帰りする時に鉄塔を見かけます。

どのくらい昔からそこに建っているのか、実はちょっとずつ動いたりしているのか、いつか役目を終えて無くなってしまう日が来るのか、何も知りません。

少なくとも自分がいなくなる時までは何も変わる事はないのではないかと、なんとなくそんな気がします。不変の象徴だからこそ、鉄塔が変わる時自分の日常も変わるような、そんな気がするのです。

 

鉄塔の種類ごとにちゃんと正しい名前もあったりするのでしょうが、今はまだ知りたいとは思いません。

知ってしまったら、不思議の膜が剥がれて途端に安っぽいものになってしまうでしょう。それはあまりにも味気なさすぎます。不思議っ娘でいてほしいです。

 

お金持ちになったら家の敷地に小さな錆びた鉄塔とか欲しいです。ツタ系の植物とか這わせてあげたい。

 

おわり。


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